KAMIJO 「20th Anniversary All Time Best ~革命の系譜~」レビュー 中編
祝・Versailles完全復活決定!ということで、一年間放置していたKAMIJOのアルバムレビューの続きを書く。
KAMIJOの音楽活動20周年記念作品で、Versailles・過去曲そのまま寄せ集めアルバムである「20th Anniversary All Time Best ~革命の系譜~」のレビューの続きです。
(この中編は2015年7月初旬に大枠を書き、2016年5月に加筆して書き上げています。なので時制は2015年7月の夏ツアー開始前基準。)
20th Anniversary All Time Best ~革命の系譜~(初回限定盤)(24Pフォト・ブックレット付き三方背BOX仕様)
- アーティスト:KAMIJO
- 発売日: 2015/06/10
- メディア: CD
アルバム全体を通した感想というか、かみじょやっぱすごいわということだけを書いた前編はこちら。
poison.hateblo.jp
ここからは、アルバムに収録されている全13曲の楽曲レビュー。とはいえ、いつも通り曲自体のことにはあまり触れず、私のただの好き嫌いと、その曲にまつわる過去の思い出、個人的な見どころだけをつらつらと書いていきます。
各曲の発売日と説明文はワーナーの公式アーティストサイトから引用。
1. Symphony of The Vampire 第七楽章「Throne」 (KAMIJO)
ソロメジャーデビューミニアルバムの長編交響曲の最終第七楽章(2014年3月5日発売)
KAMIJOのソロメジャーデビューミニアルバムSymphony of The Vampireの締め曲にして、物語の要。ルイ17世による王位の継承と、彼がその決断に至るまでの苦悩と覚悟を歌った歌ですが、その物語の内容はある意味このアルバムのテーマに近くて、まさに「革命の系譜」。なので、このアルバムに入るべくして入った曲。アルバム一曲目か、ラストのどちらかに絶対入るべきで、そしてきっちりしょっぱなに入ってきている。
Symphony of The Vampireの物語というのは、歴史上は幽閉されたまま死んだことになっているルイ17世が実は途中で身代わりと交代して生きて脱出を果たしており、しかもヴァンパイアだった、という結構なトンデモ設定なのだが、それをこれだけ真剣に第七楽章にも渡る一作品にまとめあげ、しかもこれだけのクオリティで仕上げるKAMIJOは素晴らしい。
まあアルバムの全体のストーリーの詳細を知りたい人にはSymphony of The Vampireリリース時のインタビューだか特設サイトのキャッシュだかを別途調べてもらうこととして、最終楽章のThrone歌詞でその物語終盤の流れのみを追うなれば
例え名乗り出ても 私を誰もわからない
事実は塗り替えられ 私はもう存在しないならばこのまま誰にも告げず 消えよう
そして闇に生きよう いつか即位の時が来るまで
と言って隠居を選んでいたルイ17世が、色々(あんまり色々でもないが、省略)あった末に
そうなると全て終わる 王家は歴史さえ失う
死んだ身代わりや友の為 遂に私は決めた
と決意し、
遺されたロザリオ 王冠なき王の為に
何度も受け継がれて 再びまた巡り会えた夢を見ていた 少年を待つ未来は
悲しいだけではない
彼は雄偉な王となった
最終的には王になる。
ある種の自己犠牲的な方法で王位継承を成し遂げる、というストーリーは、色々(これはほんとに色々)あったけれども、形を変えて20年間自身の信念を守りながら音楽活動をし続けてきた(そしてそんな自分自身にたしかな誇りを持っている)KAMIJO自身に重なるところがある。たぶんそういう意味も込めてこの曲を一曲目に持ってきてるんじゃないかなー。オチは犠牲の愛が大好きなKAMIJOならではというかんじもするし、このアルバムのまとめをしているかのような歌詞なので、まさにこのアルバムの一曲目にふさわしい。
歌詞を差し引いて考えても、ThroneはこれまでのKAMIJOソロの中では代表曲と言っていいのではないかと思う。現状、KAMIJOソロの中で重要な曲を数曲選べと言われたら、ソロデビュー曲だからLouisは入れるとして、他は(Prestoと)Throneだろう、他はない。Heartの中にもない(注:2015年7月時点での見解。2016年の今となってみても、Royal Bloodが入るかどうか微妙なところ、ってくらいか)。Prestoで始まりThroneで終わるSymphony of The Vampireは、KAMIJOの作品の中でも代表曲かつ大傑作に入る部類だと思っている。
この曲はKAMIJOソロ序章の要の曲なだけあり、今まではライヴに行けば大体いつも聴けた。私が最後に聴いたのは2015年2月の高田馬場CLUB PHASE。全七楽章のうちの最終楽章なだけあり、KAMIJOの気合いがひしひしと感じられる部分が多い曲なので、ライヴではほとんど全てが見どころなんだけど、敢えて言うなら、後半の「そうなると全て終わる〜」以降のKAMIJOの入り込み具合かな。ここから後は、割といつも素晴らしい、彼はここでスイッチが入るように見える。彼の集中度合いがいまいちのように思える日であっても、この部分から一気に覚醒したりするので見逃せない。
あとこの曲、ドラマーの体力消費系のスピード曲であるにもかかわらずライヴ後半で演奏されることが多いので、その日のサポートドラマーによっては曲後半で大変疲れの出ているところが見られる。っていうかまあ山本真央樹のことですが。ドラムの人は大変だろうけど、この曲でライヴ締めってのが私はやっぱり好き。Throne聴いて、やっぱKAMIJOソロ最高だーってしみじみして帰りたい。なおDIR EN GREYのShinyaが叩くPrestoやThroneは、とっても無駄にド派手で大好き、また観たい。
Symphony of The Vampire【初回限定盤A[CD+BD+31P豪華フォト・ブックレット付きスペシャルBOX仕様]】
- アーティスト:KAMIJO
- 発売日: 2014/03/05
- メディア: CD
2. Louis ~艶血のラヴィアンローズ~ (KAMIJO)
ソロ・デビュー・シングル(2013年8月28日発売)
Versaillesを辞めたKAMIJOが、ソロになって最初のシングル。これだけ唯一インディーズ(Sherow Artist Society)からの発売。
いやー、この曲を初めて聴いたときの高まり方といったらなかった。KAMIJOがVersaillesを解散してまでソロになった後、光の馬車に乗ってLAREINE時代のような白世界に誰より高く舞い上がっていってしまうのではないかと思って80%以上諦めていた私は、この曲を聴いてものすごくびっくりしたと同時に、狂喜乱舞した。だって、白系どころか、Versailles後期よりもよりダークサイドに堕ちている!KAMIJOが最も真価を発揮する、謎の悲劇設定と世界観もばっちり!さらに、歌詞もVersaillesのとき以上に中二病で最高!
我が人生に飾るロマネスク
もうこの愛に毒味はいらない
この2フレーズだけで、ぎゃああーきたーーーやったーー!ってかんじですよ。こういうの好き、やりすぎ大好き、どうせやるならこれくらい振り切って欲しい。
Louisはかみじょの世界設定の中では、主人公であるルイ17世のヴァンパイアとしての目覚めを描いた曲ではあるんだけど、ソロになって心機一転、新たな活動開始の一曲目として読んでもしっくりくる歌詞。まさに始まりの曲ですね。ソロデビューにこういう歌詞を持ってこれるところ、とてもうまい。
この曲はほとんど全編通して好き。特にサビの「彩りたい」直後に裏で跳ねてるストリングスがめっちゃ好き。シングルにはKAMIJOの歌声抜きのカラオケバージョンが入っているんだけど、それで聴くと歌声よりもオケが映えて、歌ありバージョンよりさらによいのです。って、ボーカルのソロプロジェクトなのに、ボーカル抜きのカラオケの方がよりいいというのは一体どういうことか。まあ仕方がない。唯一惜しいのはドラムが打ち込みなことくらい、他は完璧。Versailles末期に作曲でも作詞でもくすぶっていたKAMIJOが嘘のよう、これぞ彼の真骨頂とでもいうような完成度の高い作品。であるにもかかわらず、なぜかライヴではさほど盛り上がらないという謎の曲でもある。たぶんゆったりテンポのせいじゃないかと思うんだけど。どうもまったりしてしまう。
ちなみに、このアルバムに収録されているのはシングルのときのオリジナルバージョンで、アルバムHeart収録のSymphonic metal ver.とは異なるアレンジのものです。私はシングルのオリジナルバージョンの方が断然好きだから、今回のアルバムにオリジナル版が収録されているのは嬉しい。
この曲も、ライヴではほぼ確実に毎回やってた。最後に聴いたのはこれも2015年2月の高田馬場か。ラストのラヴィアンローズ部の高音をかなりの確率でうまく歌い上げるKAMIJOに未だに毎回感動してしまう。これが数年前だったら、勝率3割くらいだっただろう…なんて成長著しいんだ。この曲は今までセトリの色々な部分に入ってきていたけど、イントロにもアウトロにもどこか大団円っぽい雰囲気を感じるので、本編中盤で切り替え要因的に使われるよりも本編ラストとかアンコールで聴く方が私はしっくりくる。
Louis ~艶血のラヴィアンローズ~ 【初回限定盤 TypeA】
- アーティスト:KAMIJO
- 発売日: 2013/08/28
- メディア: CD
3. MASQUERADE (Versailles)
2ndアルバム『Holy Grail』(2011年6月15日発売)リード曲
「この世はマスカレード!」というキャッチーすぎる名コピーに乗せて、死なない代わりに永遠に生き続けなければならない運命であるヴァンパイアの悲哀を歌う作品。
この世はMasquerade
仮面を被けた魂達が踊る舞踏会
瞳だけが映し出す本当のあなたを抱きしめて
運命に堕ちてゆく
つかみのキャッチーさとは裏腹に、内容が大変劇的でとてもいいですね。サビでストレートに述べている通り、肉体は魂の入れ物に過ぎない。そのことを魂を血に、肉体を聖杯に置き換えて歌っているのがVersaillesの基本テーマである薔薇の末裔物語なわけであります。なお「Holy Grail」(聖杯)はMASQUERADEが収録されているアルバムのタイトルになっています。
途中、
もう...何が偽りなのか?
何が確信なのか? [I don't know]
とかいう、聞いてる側を完全に置き去りにした自問自答をしたりもするわけですが、そんなところを含めても、結成時からのバンドのテーマである薔薇の末裔物語を仮面舞踏会に例えるなんてかみじょーやっぱ天才だな、と思いました。この時期のKAMIJOはかなり冴えてますね。JUBILEEからHoly Grailは、Versaillesが一番本領を発揮していた時期だと思う。ラストアルバムのVersaillesは駄作。もしHoly Grailですぱっと解散し、その後一切再結成もしていなかったら、Versaillesは伝説のバンドに一歩近づいていたかも。
話をMASQUERADEに戻すと、この曲でのKAMIJOの歌唱力がJUBILEEレコーディング時よりも格段に上がっており、曲の重厚さに負けていないのがすごい。KAMIJOは、特に彼の気合いが入った曲においては他の曲とは明らかに違う歌い方をするのでライヴ観てると非常にわかりやすいんだけど、Holy Grail収録のこの曲から、ようやく音源ベースでもそれが現れてきている。同じアルバムのFaith of Decisionでも、この手の気合い入りまくり発声が聴けます。
この曲をVersaillesのライヴで最後に聴いたのは活動休止前ラストライヴのNHKホール。MASQUERADEは2011年発売のアルバムHoly Grail収録であるにもかかわらず、その後2012年の春ツアーでもその後のラストツアーでもセットリストに準レギュラー入りしていたので、結構な回数ライヴで観られて大変よかった。アルバムのメインを張れるような曲でありながら、重すぎず凝りすぎずあくまでキャッチーで、シングルカットもできるようなコンパクトさ。こういう曲をつくれるのがKAMIJOの強さ。
その後ソロになってから、2014年10月の東京キネマ倶楽部でのハロウィンパーティーライヴと、2015年2月の高田馬場で聴きました。どっちもすごくよかったが、なんだかもはや、久々にあの大好きなMASQUERADEを聴けた!遂に聴けた!という喜びが先行してしまい、全然冷静に聴けなかったし細かい記憶がない。イントロやAメロでのKAMIJOの拳がVersaillesのときほど力んでなくて普通だなあとか、ベースソロ前の間奏部での通称KAMIJOウォークが相変わらずで懐かしいなあとか、サビ頭でドラム以外全員がぐるっと回るあれはやっぱいいなあとか、その程度。
特にハロウィンライヴのときは、HIZAKIがゲスト出演していて、MekuとDAISHIと一緒に3人でトリプルギターを弾いたんです。当時まだMASASHIはサポートに入っていなくて、ベースはIKUO。Versailles解散(公式には活動休止だが)後、約2年越しで久し振りに聴いたVersailles曲に私は心のざわざわが止まらなかった。そして何より、久々にステージ上で見たHIZAKIの姿に感動した。Versailles末期から、HIZAKIは段々外見(というか顔)が変わってきて、最近はTwitterとかでその顔を見ても「…?」と思うことばかりだったし、ハロウィンパーティーやHeartへのギター参加も単なるビジネスリーズンだということはわかりきっていたので、ハロウィンライヴにHIZAKIが来ると知ったときもあんまりテンション上がらなかったんだけど、いざ、一年振りに目の前に現れたらやはり興奮してしまった。顔が変わっていようが、例えVersailles本体が決して復活しなかろうが、もうそんなことはどうでもいい!ただ、今この瞬間にHIZAKIがこうしてKAMIJOと同じステージで演奏している、その事実だけが重要で、それだけで十分に尊い!と心から思いました。
KAMIJOとHIZAKIが同じバンドで共演するなんて奇跡だなあと、つくづく思い知らされる一曲。
ちなみにHoly Grail発売時のMASQUERADEレビューはこちら。
- アーティスト:Versailles
- 発売日: 2011/06/15
- メディア: CD
4. God Palace(Versailles)
1stアルバム『JUBILEE』(2010年1月20日発売)リード曲
全四楽章からなる、KAMIJOお得意の大交響曲。ゴッドパレス、いわゆるゴッパレ。私は以前からこの曲をゴッパレゴッパレと勝手に呼んでいたのだが、先日かみじょ自身がこの曲のことを「ゴッパレ」と書いていたのを初めて見てびっくりした。うん、ゴッパレだよね。ちなみに、ゴッパレの「パレ」部分について、Palace=城、と無理矢理に意訳すると、God Palace=神城=KAMIJOとなる、という、どうでもいいこじつけネタもあります。ほんとどうでもいいけど。
この曲もThrone同様、このアルバムに入るべくして入った曲。なんてったって、JUBILEE収録時のサブタイトルは「-Method of Inheritance-」。なぜかこのベストアルバム収録時にはサブタイトルが抜けているが、革命の系譜というサブタイトルのついたこのオールタイムベストアルバムにぴったりな曲なのである。
ちなみに、アルバムJUBILEEではこの曲が1曲目で、ラストの12曲目がSound in GateというKAMIJOお得意のインスト曲なのですが、このアルバムは回り続ける時計の針のような構造なので(そのアルバムの構造自体が輪廻や永遠を表している)、是非ゴッパレはSound in Gateの後に続けて聴いて下さい。そうやって聴くことで、よりゴッパレのよさが際立ちます。Sound in Gateは12曲目(12時)ではあるけど、実際には0曲目(0時)です。
そんなゴッパレ、今回のアルバムのラストにも収録されている、ソロになってからの曲「運命」の原曲でもあるわけですが、KAMIJOはわざわざソロになったというのになぜ去年の段階で早くもセルフカバーなんてやったのかというと、それはこの曲がVersailles時の最高傑作のうちの一作だからですよ。第四楽章まであって途中で展開やリズムがめまぐるしく変わりゆくというKAMIJOならではの長めド派手曲で、曲だけじゃなく、歌詞もすごい。薔薇に包まれてみたり、神を相手に煽ったり、そうかと思えば神を名乗っちゃったりと、全体的にとんでもなさ全開。素晴らしい。
私は薔薇に包まれて孤独と共に生きてゆく
孤独は思想の戯れ 涙は記憶の覚醒
人はいつか滅ぶだろう その時あなたに孤独を!
I'm already God
…すごいね。まあラストアルバムでのジャケ写で最後の晩餐やってキリストの位置に座っちゃうような人だからね…神でもあるし神の子でもある(矛盾)んだね。うん、すごいね。
なおAメロの「鳥には空を人には愛を与え」という歌詞は、Versailles時にKAMIJOが好んで使っていたモチーフなので、6曲目のPRINCEのレビューで後述します。
しかしこのベストアルバムでは、マスカレードの後にゴッパレがくるというのがすごいですね。すごい、けど重い。なんか、大盛りのかつ丼を食べて、その後に締めとしてこれまた二玉分の豚骨ラーメンを食べる、みたいな胃もたれ感。私は大好きな二曲だけど、この手の曲が好きじゃない人ならここでこのアルバムを聴くのをやめてしまいそうだ…が、これを越えれば次のDESTINYはポップなので我慢して聴いて下さい。まあその後にDead Orchestraという特盛曲がまた来るわけですが。
ワーナーの紹介文にある通り、この曲はJUBILEEの要の曲なので、当時のライヴではかなり大事な位置付けで演奏されていた。JUBILEEツアーのホールライヴでは、ステージ後方のバルコニー部分に白装束の集団がずらっと並んでクワイアをやっていたりもした。ゴッパレは長めのコロコロ展開曲である上にラストが山場なので、ライヴではその最後までKAMIJOの集中力が持つかどうかに全てがかかっている。サビ後にワルツを踊り、「美しく美しく美しく舞い踊れ」三回転ターンをキメた後、「これが現実だとして〜」、ここからがキモ。この先は、KAMIJOの調子がよければかなりいいものが観られる一方、そうでない日は力みだけが目立って結構悲惨。
ゴッパレといえば私の中では2011年のHoly Grailツアーのさいたま新都心HEAVEN'S ROCKでの印象が一番強いんだけど、あの日のゴッパレはほんとうにほんとうに素晴らしくて感動した、ラストを歌い切ったあの瞬間の感動を4年経った今でもはっきりと思い出せる。KAMIJOのキャラとか作曲能力とかにじゃなく、ライヴでの生歌に感動することなんてそれまでほとんどなかったから、あれは衝撃でした。しかし冷静に考えると、あそこでKAMIJOがあんなにいい歌を歌っていた(ように聴こえた)のは、ゴッパレが彼渾身の大名作であるからかもしれないが、単にあのライヴハウスの音響と私の耳の相性がいいというだけなのかもしれない。2014年11月にヘブンズロックで観た、ソロになってからのライヴもすごくよく感じたからなあ。ちなみに今調べたら、私が最後に生でゴッパレを聴いたのはあの2011年のさいたまライヴらしい。えーほんとにー!?あれが最後だったのか…!その後、活動休止までに一回くらいは聴いてるとばかり思ってた。
- アーティスト:Versailles
- 発売日: 2010/01/20
- メディア: CD
5. DESTINY -The Lovers- (Versailles)
2ndシングル(2010年10月27日発売)
Jasmineさんが亡くなって、JUBILEEツアーからサポートベースとしてライヴに参加していたMASASHIを「6人目のメンバー」というどこかで聞き覚えのあるフレーズを使って正式に召喚した2010年のJUBILEEツアーファイナル@C.C.レモンホール公演で、MASASHIの加入発表直後に初披露した曲。いわゆる、新生Versaillesとしての一曲目。
普段、KAMIJOの歌詞は「〜してあげる」系が多くて、この押し付けがましさと強気さが王子様的立ち位置でのKAMIJO歌詞の特徴なんだと思う一方で私自身は全く好きではないので「またですか」といつも思っていたのだが、この曲では「〜してあげる」を封印しており、それどころか「〜してくれ」系に宗旨替えしているのが興味深い。
傷だらけの心を隠す意味などない 見つめて
愛で抱きしめて 壊れ始めた 心が 枯れてゆくまで
一人にしないでくれ 隣で笑ってくれ
夜が明けるまで
愛する人よ 側にいて 枯れてゆくまで
うーん、弱気。ていうか、急に求めすぎ。華々しいメジャーデビュー直後にベースのJasmine Youが突然亡くなって、急遽活動休止して、やっと新ベーシストを迎えて活動を再開した後のシングルということで、通常時よりも弱気モードになっています。Versailles初期の強さというか、貴族設定そのままの気高さのようなものがこの曲では完全に消滅している。このナヨさ、ちょっとLAREINE寄り。
初めて聴いたあのライヴの日から今まで、私は一貫して好きではない。オリジナルメンバーのベーシストを亡くしたファンに向けてつくった曲、みたいなことを言っていた気がするが、そんなんは言おうと思えば全ての曲に対して言えるので私は別にどうでもいいし、思い入れもない。そういうのはいいんです、活動中に実際にメンバーが死んじゃうという現実はもういいんで、永遠に死なないヴァンパイアが主役の薔薇の末裔物語を引き続き演じ切って下さい。
あとは衣装が最悪。DESTINYも、その次の3rdシングルPhiliaも、資金繰りが苦しかったせいかジャケ写は同じ衣装なんだけど、ちょうどこの時期にVersaillesはお願いかなえてヴェルサイユで地上波バラエティに進出しており、なんでこういう大事なときに限ってこんな衣装なんだー!と悲しくなったものである。KAMIJOの衣装、生で見たら美川憲一とマツケンサンバの合いの子みたいなだささしかないし、HIZAKIの衣装に至ってはティッシュで作ったみたいに見える安っぽい花がついてるからな…やはりJasmineさんの急死関連で、それまで衣装を作成していたID JAPANをも敵に回し、訴訟合戦をやった代償は大きかったですね。
最後に聴いたのはNHKホールでのVersaillesラストライヴ時か。まあ数少ないシングル曲だから、最後のライヴではやるよね。この曲私は全然好きじゃないから、別に今年(注:2015年)聴けなくてもいいや…まあ今年はサポートでMASASHIもいることだし(KAMIJOソロだというのに、結局Versailleのベーシストを召喚しているというこの現状)、たぶん結構な回数やるんだろうなー。
DESTINY -THE LOVERS- (初回限定盤A)(DVD付)
- アーティスト:Versailles
- 発売日: 2010/10/27
- メディア: CD
6. PRINCE (Versailles)
インディーズ唯一のシングル曲 from インディーズ・ラスト・シングル「PRINCE & PRINCESS」(2008年12月10日発売)
メジャーデビュー前唯一の一般流通シングル両A面のうちの表曲で、薔薇の末裔物語の一部というよりは、「これからメジャーデビューするけど、バンドを信じてこれからもついてきて下さい」的なファン向け曲。
上でDESTINYのところにも書いたけど、この曲もKAMIJOが大好きで私が大嫌いな「〜してあげる」で始まり、あなた(ファン)を連れて大空(メジャー)に飛び立ちますよと歌っている。
あなたを奪い去って もう誰にも渡さない
今あなたを抱き寄せて 空へ連れ去りたいこの未来へ
両手で羽ばたく事は出来ないけど
あなたを抱きしめたままで空へ飛び立てるなら
ただこれ、KAMIJOさん的には結構こだわりの歌詞なのだと思われる。上に引用したサビやラストサビ前の「抱き寄せて空に連れ去りたい」だの「抱きしめたまま空に飛び立てるなら」だのという歌詞は、この曲がシングルとして発売されたときに両A面のもう片方の曲として一緒に収録されており、後にJUBILEEにも収録された曲PRINCESSの「なぜ人は翼を捨てたのか」という歌詞に呼応しているのです。どういう意味かというと、KAMIJOの中では
Q. なぜ人は翼を捨てたのか?
A. 翼で自由に空を飛ぶことよりも、愛する人を両手で抱きしめることの方を選択したから
ということらしい。わー、ロマンチック。当時、よくMCでも言ってたし、インディーズ時の2008年渋公ライヴで流れた映像の中でもこの手の説明があった。いや、別にヒトは鳥類から進化したわけじゃないから!それ以前にヒトは鳥類とは別系統だから!とつっこみたくもなるが、ロマンチストなかみじょーさんに対してそんな野暮なことは言えません。毎回書くけど。
しかし、この頃はバンドに勢いがあってよかったねー。2008年のNOBLE発売から2009年のJasmineさん急死までが、無根拠のバンドの勢いとしては一番だったのでは。楽曲のクオリティとなるとその後のJUBILEEもHoly Grailも非常によかったけど、メジャー進出前によく見られるあの特有の無根拠なままの勢い、あれがPRINCE発売時にはあって、ものすごく惹きつけられた。あとはジャケ写もよい。このときはまだID JAPANと訴訟問題になる前だったけど、この回の衣装はアリパイがつくってるんだよね。それまでのID衣装と違う路線で、これはこれでよかった。Jasmineさんの頭飾りは謎であったが、KAMIJOは画処理により白の王子衣装がよく映えているし、HIZAKIもかわいい。HIZAKIは、NOBLE後~メジャーデビューあたりが一番私の好きな外見(ヘアメイク)してたなあ。
PRINCEを最後にライヴで聴いたのは、ライヴハウスでのラストライヴだった2012年12月の鹿鳴館第二部。PRINCESSとセットで聴いた。同日にあった第一部でも二曲まとめてやっていたね。この二曲、私はそんなに好きじゃないけど(特にPRINCESSのカオス具合は最後まで好きになれなかった)、ライヴで客の反応見ている限り結構な人気があったのだと思われる。Versaillesには、zombieとかプリプリとか、私にとってはよく理解できない人気曲がちょこちょこあったなあ。まあ私は、KAMIJOのつくる、わっかりやすーい王道展開ド派手耽美曲が好きなので。
- アーティスト:Versailles
- 発売日: 2008/12/10
- メディア: CD
…と6曲分の思い出をつらつらと書いてみたけど、いやー、この記事長いな!余計なことばっかり書いてる、というか余計なことしか書いてないので、いくら書いても終わらない。前後編に分けるつもりだったけど、この記事を中編ということにして、やっぱここでもう一回切ります。
7曲目のAristocrat’s Symphony以降のレビューは後編で。しかしこのペースだと、後編書き終えるのは2017年になるのでは…