KAMIJO・「20th Anniversary All Time Best ~革命の系譜~」レビュー 前編

6月10日に、KAMIJO活動20周年記念アルバム1枚目、「20th Anniversary All Time Best ~革命の系譜~」が発売になりました。

KAMIJOキャリア20周年記念リリース第1弾!

KAMIJOがキャリア20周年を迎える2015年、レーベルの枠を超えたオール・タイム・ベスト・アルバムの発売が決定!!LAREINE(ラレーヌ)の全メジャー・シングル4曲、Versaillesヴェルサイユ)の各アルバムのリードチューン6曲、そしてKAMIJOソロ作品からは代表曲3曲をセレクトした全13曲を収録!!

ワーナー公式サイトより引用)


この夏はアルバムが2枚出ますが、1枚目のこちらは過去曲をただそのまま詰め込んだだけで、新曲も一曲もなければ、過去曲がリテイクされているわけでもない。

LAREINEファンなど、昔からKAMIJOのことを好きな人は過去音源を持っているだろうから、このCDをわざわざ買うのは、彼のことがよほど好きなファンか、比較的最近好きになってついでに過去曲も聴いてみるかという人、もしくは夏ツアーに向けて予習するというまじめな人達だけであろうと予想される。

LAREINEファンでもなんでもなくVersaillesからのファンである私ですら、このアルバムの収録曲は元々全て持っていた。つまりはこのアルバムの曲順にiTunes内のデータを並べてプレイリストをつくればそれで済んでしまうわけで、別にわざわざ買わなくてもよかったんだけど、まあ20周年祝いということで結局一枚だけ買いました。

買うのを迷ったくらいだから、発売前は、これはCD買っても全く聴かなくなりそうだなーとか思ってたけど、いざ買ってみたら意外にも結構聴いている。まあそんなもんです。7月の次のベストアルバムが出るまでは、しばらく聴き続けるんじゃなかろうか。


というわけで以下、アルバムの内容について。


収録曲について

まず最初に書いておきたいのは、このアルバムはオールタイムベストアルバムと銘打っているものの、別に過去の各バンド・各時代の代表曲を詰め合わせているわけではないということ。選曲基準としては、KAMIJO一人が作詞作曲を担当した(ことになっている)曲で、しかもビジネス的に問題ないものだけを入れている。

ほんとにベストアルバムらしいベストアルバムをつくるつもりなのであれば、例えばVersailles曲でいうとインディーズデビューシングルで「俺たちのキラーチューン」こと、The Revenant Choirはまず間違いなく収録されるはずだし、ライヴのアンコールで定番のSympathiaも、KAMIJO渾身のメジャーデビュー曲であるASCENDEAD MASTERだって確実に入るはず。でも、実際問題このアルバムには収録されていない。なぜって、これはVersaillesのベストアルバムではなくあくまでKAMIJOのベストアルバムだからである。レベナントは作曲がVersailles名義だし、SympathiaはHIZAKI名義、KAMIJOお得意の曲調で明らかにKAMIJO曲である(ように私には思える)アセンデッドだって、HIZAKI名義。だから収録されていないんだと思われる。

もう一つの理由の「ビジネス的に問題ないもの」というのは、ワーナーから出して問題ないものであるということ。LAREINEでいうと、ここ数年内にソニーから再発されたMétamorphoseやLILLIE CHARLOTTEは収録されていない。このアルバムの発売が発表された当初は収録予定曲に入ってたような気もするけど、やっぱやめたのかな。まあ、そりゃそうだよね…せっかく別レコード会社から再発したばっかだもんね。それをワーナーからまた出しちゃ、ねえ。

結論として、ワーナー公式が作品紹介で言っている「LAREINEの全メジャー・シングル4曲、Versaillesの各アルバムのリードチューン6曲、そしてKAMIJOソロ作品から代表曲3曲をセレクトした全13曲」という説明は、実際の内容とはかなり異なっている。薔薇は美しく散るはどこに行った?というかんじだし、DESTINYはアルバムのリード曲ではないし、PRINCEに至ってはシングル曲だし、運命はまだ代表曲というほどの地位を築いていない気が。

これはあくまで今のKAMIJOに都合のよいKAMIJO個人のベストアルバムなので、各バンド時代の代表曲や、当時のほんとの雰囲気を知りたい人は、過去の各バンド・各時代のオリジナルアルバムを買うなりライヴDVDを買うなりした方が絶対よいです。

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声と歌い方の変化について

ご存知の通り、KAMIJOさんはLAREINE時のなよなよねっとり高音ひっくり返りボイスから、Versaillesでは暗黒お耽美ヴィジュアル系メタルワールドに合うヴァンパイアボイスへと大進化を遂げました。歌い方はもちろん発声自体も昔とはかなり変わっているので、過去曲と今の曲を織り交ぜたアルバムをつくったら、曲の切り替え部でその変化が気になりすぎてアルバムの流れ自体に集中できないのではないかという疑念があり、私はそこを一番心配していた。しかし実際に聴いてみたら、予想していたほどは気にならなかった。

曲順が逆時系列で綺麗に並んでいるおかげで、声の変化が唐突ではなく、あくまでゆるやかに徐々に変わっていっているから、というのが一番の理由だと思う。この曲順は大正解。あとは私がかみじょファンで、彼の歌については超多めに見るくせがついているせいもあると思うけど…

KAMIJOソロからVersailles中後期(LouisからMASQUERADE)への流れはほとんど違和感がないし、Versailles最初期からLAREINEメジャー初期(Love from a Dead Orchestraからあの人の愛した人なら)も、予想していたようなレベルの違和感はなかった。ここは7年間も空いてるのにね!

VersaillesLAREINE(しかもメジャー初期)の間で、予想していたほどの差を感じないというのはほんとうに意外だった。差がないとは言わないし、あの人の愛した人ならに差し掛かると毎回「……」ってなるのは否めないけど。まあ、あの人の愛した人ならがバラードで、高音ひっくり返しまくり系じゃないってのが大きいとは思う。選曲うまいなあ。ここで下手にポップな曲持ってきてたら、Love from a Dead Orchestraとの差が際立っていたのでは。

でもまあ、やっぱりKAMIJOの歌が一番大進化を遂げたのはVersailles中期だと私は思っている。ライヴでも、メジャーデビュー前と復活後ではだいぶ変わったもんなあ。JUBILEEツアーやHoly Grailツアーでは、他の見どころをを差し置いて「うわあ、ボーカルの歌がうまくなっている!」という、非常に基礎的な部分に感動することも多かったものである。自ら変えようとして、実際に動けば、人はある程度は変われる。実際に、LAREINEから今現在まで、この15年くらいの間でKAMIJOの歌がどれくらい変わったのかは、このアルバムの12曲目と13曲目を続けて聴けばわかるよ。


初回限定盤についてくるブックレットについて

初回限定盤CDは三方背BOX仕様。キャリア20周年のメモリアル・フォト満載の24Pフォト・ブックレット付き(フォトグラファー:逸見隆明)。また、KAMIJOのキャリア20周年年表掲載。


価格もそんなに変わらないし、せっかくだからと初回限定盤を買ったらば、このフォトブックレットがすごかった。

なんか普段のCDの歌詞カードとかみたいに、1ページに1カットずつKAMIJOの過去の写真がある写真集、みたいなものを勝手にイメージしていたんだけど、ふたを開けてみたらば、1ページに1カットどころか、1ページの中にかみじょが6,7人ずついた。なんか写真集というより、素人がそのへんのアプリでアー写をコラージュしてインスタに上げた画像、みたいな仕上がりになってる。それぞれの写真はいつもの逸見さんが担当しているのでもちろんプロの仕上がりだけど、構成が。

しかも、載っている写真は全てが全て、見事なナルシストショット。ほんとこの人、自分大っ好きだな!まあ私はステージ下から眺めている分には、卑屈なアーティストよりも、自分のことが好きで堂々としているアーティストの方が好きだから、いいけど、いいけど。


しかしこうやって改めて過去のアー写を俯瞰で見ると、私はやっぱりAesthetic Violenceのときのくるくる頭とあの頃のメイクと画処理が一番好きだなあ。
Aesthetic Violence:KAMIJO Ver. [DVD]
2007年当時からLouisと言っている…まあノードオブスケルツォのときもだし、一貫してるよなーまじで。(Louis=後のKAMIJOソロでのインディーズデビューシングル名)

この衣装見ると、2008年の8月の主催イベントTokyo Metropolis@O-EASTで、2daysの初日が見事なLyricalセトリで、それまで私が生で見たことなかったLyrical衣装でライヴやってた、あの日を思い出すなー。あの初日は最高に楽しかった、が、その翌日はバンド名改名という発表をした挙句にやけくそ逆ギレぐだぐだMCをしてしまうという、残念なかんじのライヴでした。

他にも、なんか、KAMIJOが一人で薔薇くわえたり、葡萄食べてみたり、葡萄の汁を口の端から垂らしたり(血のイメージなのだろうが、どうしても食べこぼしたようにしか見えなくてウケる)してて結構面白いです。他の人は一切出てこないしひたすらにかみじょ祭り状態なのでかなり異様だけど、気になる人は是非とも初回限定盤を買ってみよう。


TERU(Versailles→Jupiter)がジャケットのデザインを担当

歌詞カードをぼーっと読んでいたら最後のクレジット部に、何気に「Designers:wait a minutes (Cover)」の記述が!


これは何を意味するかというと、おてる(Versaillesの下手ギターのTERU)がジャケットのデザインに携わったということを意味します。

KAMIJOソロが始まってから2年、今まで表立ったところではKAMIJOソロへの参加の形跡が見られなかったおてるですが、こんなところで参加していたとは。…と思っていたら、おてるは今年のKAMIJOの活動20周年記念ツアーのファイナルであるZepp Divercity Tokyo公演にゲスト出演することも発表された。

KAMIJOはVersaillesを解散して(公式にはあくまで「活動休止」)わざわざソロになったというのに、HIZAKIはアルバム内の収録曲でギターを弾くわKAMIJO主催のハロウィンパーティーにゲスト出演してそのギター参加曲の片手に夢を持つ少女とVersailles曲のMASQUERADEを弾くわ、MASASHIはサポートメンバーとして今年のツアーのうち海外公演をも含むかなりの数のライヴに同行しているわ、おてるはベストアルバムのジャケットデザインしてるわ今年のツアーファイナルにゲスト出演するわで、一体何なんだ。なんたる露骨な戦略。残るはYUKIだけですね。


この20年間でのKAMIJOの大進化について

最後に、KAMIJOのこれまでと現在について。

上で、意訳すると「結局はそんなにVersaillesメンバー召喚しまくるんならVersailles解散しなけりゃよかったじゃん再結成でもすればいいじゃん」的なことを書きましたが、じゃあ私は今ほんとにVersaillesの再結成を望んでいるのかというと、実はそこまででもない。もちろん、いざ再結成されたら小躍りどころか大踊りするし、今年のツアーでVersaillesの曲をまた生で聴けるのはとっても嬉しい、でも、「KAMIJOは早くソロをやめてVersaillesに戻ってくれ」と心底思っているわけではないのである(めんどくさくてうざいファン)。

というのは、2年前から観ているKAMIJOソロが、やっぱりとっても楽しいから。心から楽しいし、いつだって次が楽しみ。Versaillesの頃の、あれだけ楽しかった記憶が上書きされちゃうんじゃ、と思うくらい楽しい。

過去は過去、今は今、未来は未来。過去はよかったし、たしかに成功もした、でも今だって全力でやるし、未来は今日までの過去以上に素晴らしいものになるように自ら作り上げていく。ソロになってからのKAMIJOを見ていると、ステージでもMCでもインタビューなんかでも、そういう強い意志を感じることが非常に多い。彼は過去に固執するでもなく、逆に否定するでもなく、単にうまく利用することで、今現在の自分の立ち位置と未来を大事にしている。

過去を認めて今と未来に活かす。言うのは簡単だけど、こういうことはなかなかできないです。特に、こういう風に20年間も人前に立つ仕事をし続けていて、外部環境の後押しもあって狭い業界内での知名度的には最初の数年でそこそこのところまでいっちゃった経験がある人の場合は。


特にKAMIJOなんて人生で3回も、しかも違うバンドもしくはソロ名義でメジャーデビューして、途中で自分以外のバンドメンバーが全員脱退したりやっぱり帰ってきたりまた雲隠れしたりヒザプロのボーカルを抜いてそこに自分が入っちゃったりそうしてつくったバンドが再度メジャーデビューまでこぎつけた矢先にベーシストが急死したりしているというのに、これだけの波瀾万丈なボリューム感あふれる過去を全て受け止めて、その上でしっかりと肯定している。

そもそも、相当な図太さと過去肯定力がないと、いくらビジネス目的であるとはいえ、20周年記念でこんなCDは出せない。20年前からあんまり変わっていない安定したアーティストならまだしも、KAMIJOはガラッと変わったタイプのアーティストだからね。昔のあの声とあの歌い方の音源をそのまんま再発売し、昔のあの顔と演出のPVを映像演出として今のライヴで流すなんて、すごすぎる。

上に書いた初回限定盤のブックレットに載っている過去のアー写を見ても、この人はうまく歳をとってるなーってつくづく思う。時代と環境と自分の年齢と立ち位置に合わせて、ファンが離れない程度のスピードで、徐々にだけどしかし確実に外見の方向性を変えている。薔薇は美しく散るでコラボしたときのベルサイユのばら池田理代子大先生に「オスカルの生まれ変わり」(だっけ?)とまで言わしめるほどハマっていた若き日のオスカルお兄さん像にこだわらず、歳をとったら王家の血を引くヴァンパイアの王にシフト。王様キャラは10代とか20代前半のバンドマンがやっても深みというか凄みが出ないので、40歳目前の今こそ、やるにふさわしいタイミングだと思うし。

この人は、自分自身のことをほんとうによくよくわかっているんだろうね。自分のことが大好きな一方で、自分を客観視するのもうまいんだろうな。さすがナルシスト。じゃなかったら、歳とって外見が変わった今でも、頑なに同じオスカルお兄さん路線に留まっているはずだよ。


90年代末のヴィジュアル系ブームにのって出てきて「ロマンス革命!」という最高すぎるキャッチコピーと共にメジャーデビューしたボンジュールお兄さんが、16年経った今でも未だにボンジュールと言っていて、しかも日本国内にとどまらずフランスでもパリやマルセイユのファンを前にボンジュールと言っていて、「ボンジュール!」と叫ぶファンに対して「いやいや、夜だからボンソワールだろ」とつっこんで逆に笑いを取っているなんて、16年前のLAREINEメジャーデビュー前後には一体どこの誰が予想できただろうか。いや、(反語)。

上に書いてきたことは全て、自分のやりたいことはそのままに、確固たる信念に基づいて、時代と環境に合わせて自分自身とその見せ方を柔軟に変えてきたKAMIJOだからこそ成せる業だし、そんな彼だからこそ、今のこの立ち位置があるんだと思う。ほんとうに素晴らしい。

このあたりのことが全て詰め込まれている素晴らしい曲が、このアルバムの13曲目に収録されている、KAMIJOソロでの曲「運命」なんだけど、その点についてはレビュー後編でまた別途書きたい。


アルバム全体の感想としてはこんなところ。

続いてのレビュー中編と後編ではいよいよアルバムに収録されている全13曲について、いつも通り言いたい放題、好き勝手に書きまくろうと思います。
poison.hateblo.jp


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