Versailles YUKI ドラマー引退発表

2023年9月10日の昼12時に、「Versaillesから大切なお知らせ」という記事がVersaillesの公式サイトに上がり、

その内容はドラマーのYUKIの引退発表だった。

今年2月にYUKIの年内でのドラマーとしての活動休止を発表させていただいておりましたが、この度YUKIから引退の申し出があり、大変残念ではございますが12月14日のZepp Haneda公演が現メンバーでのラストライヴとなることをお知らせします。

いつかは公式サイトから消えてしまうであろう発表内容全文は、他メディア含めて一般公開されているので、この記事の下の方に転載します。


目次

 

今回の発表内容について

YUKIが引退するという今回の発表内容は、おそらく大多数のファンが予測していたVersaillesの近未来の数シナリオのうちの一つだった。

年内いっぱいでYUKIが活動休止に入るという発表は今年2月に既になされていたので、その後の発表として今回あり得た選択肢としては

  1. 来年以降のVersailles自体の活動休止発表
  2. 来年以降のVersaillesの活動内容や、サポートドラマーの発表
  3. YUKIの引退発表

あたりで、

まあ今回は1かなーVOGUEの歌詞もめっちゃ終幕っぽいし、3はいずれは来てしまうかもしれないけど、その前に1か2が来るだろうな…とか思ってたけど、いきなりの3だった。


私は、YUKIの活休発表を聞いた今年2月のHoly Grailツアーファイナルのアンコール時と未だに同じ気持ちです。

好きなバンドマンには、個人として元気でいてほしいし幸せでいてほしいけど、一ファンとしてはステージ上でドラムを叩く姿をずっと観ていたかったのも同じく本心なので、普通にまだ悲しい。でも、これでよかったんだということもわかってる。


過去の「Versaillesより大切なお知らせ」

思い返せば、我々は2009年の8月頭に「緊急のお知らせ」というタイトルで当時のベーシストJasmine Youの活動休止を知らされ、

その直後の8月10日に「Versaillesより緊急のお知らせ」というタイトルでJasmineさんの死を知らされ、

2012年のKAMIJOの誕生日には、翌日の日付で書かれた「Versaillesより大切なお知らせ」というタイトルの活動休止宣言を突然フライングでぶっ放されたという経験があるので、

「(アーティスト名)から大切なお知らせ」「(アーティスト名)から重要なお知らせ」と言われると大抵は(ファンにとって)悲しいお知らせであることを十分学んでいるので、今回もリンクを開く前になんとなく察してしまったわけですが。

やはり今回も悲しい話であった。

ただ、発表コメントや各メンバーからのコメントが、14年前のJasmineさんのときのようなやばさではなかったことは救い。Jasmineさんが亡くなったときは、その後Jasmineさんの引退を公表する事務所からのコメントがどこかから流出したりして、その文章のやばさにファンの皆がひいたものですが、今回のコメントはまともだ。

バンドとしてやばいコメントを出さなかったこと、YUKIが限界を迎える前にどうにか脱退できたこと、この点だけを見ても、Versaillesはあの事務所を抜けて正解だったと思える。


ジストニアという病気について

YUKI自身のコメントにあるように、脱退理由は以前から本人が公表していたジストニアの症状悪化と、ご家族の事情とのこと。

バンドマンのプライベートなところについては我々ファンがどうこう言う部分ではないので、ジストニアについてだけ書く。


職業性ジストニアは、私が短期的にでも聴いていたバンドマンだけに限っても、複数名が罹患している。私が初めてこの病気を認識したのはたぶんGRAPEVINEのベースの西原さんが発症して、後にバンドを脱退したときだと思う。

Versaillesの周辺だけを見ても、Versaillesの盟友(?)の摩天楼オペラのドラマーの悠がジストニアでバンドを脱退しているし、Jasmineさんが以前所属していたバンド雀羅で組んでいたドラマー、Blu-BiLLioNのSeikaもジストニアを発症し、脳の手術を受けたものの最終的にバンドは解散している。


ジストニアで活動休止中のRADWIMPSのドラマーの山口智史さんによるN=1000以上の調査では、調査に回答したプロドラマーのうち11人に1人が医療機関でジストニアの診断を受けている、とのこと。

山口さんは、自らのネットワークを生かし、1000人以上のドラマーをアンケート調査した。するとプロのドラマーの11人に1人が医療機関で、この病気の診断を受けたと報告し、その多くが山口さんと同じ右足に症状が出ていたことが分かった。専門家からは「11人に1人というのは驚くべき数字だ」との声も上がっている。

すごい数だ。それだけたくさんの患者がいる病気だということに驚く。

このサンプル数1000以上のデータというのは、2022年に山口さんと慶應の藤井先生によるアンケートでとられたもので、リズムアンドドラムマガジンでも呼びかけがあった模様。

このジストニアという病気、身体的に症状が出て仕事に直接影響してしまうのはもちろんのこと、精神的にもかなり追い詰められる類の病気のようだ。

手足を思い通りに動かすことが仕事だったミュージシャンが、あるときからなぜか手足を自由に動かせなくなってしまう、しかもだんだん症状が悪化していくことが多いし、治療法はまだ確立しておらず、脳の手術までしたって治るとは限らない。音楽をやっていない素人が想像しただけでも、相当つらい。


VersaillesのYUKIに話を戻すと、Jupiterの頃からジストニアの症状があったと以前本人が個人のYouTubeチャンネルで言っていたのだが、その発表があるまで私は彼の異変には全く気がつかなかったので、当時とても驚いた。

2016年にVersaillesが活休から帰ってきて、またYUKIのドラムを聴けるようになり、その後KAMIJOソロでも聴けるようになり、どちらのライヴに追いてもYUKIは以前と変わらず複雑で手数足数がやたらと多い超速ドラムをいつも淡々と叩いていたし、なんならジストニアの公表後も現在に至るまで、素人目には演奏自体に特に変わったところは見られなかった。ライヴで生演奏を聴いていて、YUKIのドラムに対して違和感を感じたことなんてここ数年もほぼない。

でも、我々が以前と変わらないYUKIのドラミングを観ることができ、ずっと変わらないVersaillesのライヴ演奏を聴くことができていたのは、きっとYUKIがジストニアの発症後にめちゃくちゃ努力をし続けていたからで、それがYUKI本人にとってはものすごい負担だったんだろうなとも思う。コロナでしばらくライヴを観なかった後の2022年にライヴハウスの距離感で久々に生で彼の姿を見たとき、あまりのやつれ具合にびっくりしたのは事実だし。

苦渋の決断ではあっただろうけど、今回ドラマーを引退することで、彼がその身体的・精神的負担から少しでも解放されればよいと思う。


YUKIは年末で活動休止ではなく「引退」と明言されているので、来年以降はYUKIのドラムを観ることはもうできないし、そもそもライヴの場でステージに立つ彼をフロアから見上げることもできなくなるんだろうけど、私がVersaillesを観始めた2008年からこれまで15年間もの長い間、断続的に彼のドラミングを観ることができて、大好きな音楽を彼のドラムで聴くことができたことは、ほんとうに幸せだった。

たくさんの思い出と音楽をありがとうございました。

年末でYUKIが脱退した後、来年以降のVersaillesの活動がどうなるのかはまだ発表されていないしわからないけど、Versaillesの未来も、YUKI個人の未来も、どちらも幸せであるように祈りたいと思います。


発表内容全文


Versaillesより大切なお知らせ

今年2月にYUKIの年内でのドラマーとしての活動休止を発表させていただいておりましたが、この度YUKIから引退の申し出があり、大変残念ではございますが12月14日のZepp Haneda公演が現メンバーでのラストライヴとなることをお知らせします。
残り短い時間ではございますが、9月22日から始まる「Japanese Visual Metal Tour」、そして現メンバーラストステージとなる12月14日Zepp Haneda「CHATEAU DE VERSAILLES」公演で、YUKIに最後の花道を作り送り出したいと思います。今後のYUKIの人生とVersaillesに変わらぬ応援をよろしくお願いいたします。

2023.9.10 Versaillesメンバー一同

YUKIコメント

みなさんにお伝えしたい事があります。
今年の2月に「2023年12月14日でドラマー活動を休止する」と発表しましたが、その日をもってドラマーを引退をする事に決めました。

「ジストニアによるドラムプレイの葛藤」
「サポートが必要な家族の傍に居たい」
これらの状況が以前より悪くなっていく中で、技術、時間、気持ちなど全てのバランスが崩れてしまいました。
メンバーは待つと言ってくれたし、ファンの皆さんからも沢山の応援メッセージを頂きましたが、Versaillesのドラマーとして今の自分、この先の自分に期待が出来なくなり今回の決断をしました。

必ず帰ってくると言いながらこの様な結果になった事を申し訳ないと思っています。
本当にごめんなさい。

最後となる12月14日まで、全力でVersaillesのドラムを叩きます。
これまで関わってくださったスタッフの皆さん、関係者の皆さん、ファンの皆さん、そして色んな夢と景色を見てきたメンバー、心からありがとうございます。
最後までよろしくお願いします。

KAMIJOコメント

バンドである以上、その歴史が長くなればなるほどYUKIに限らずいつかはこういう日が来てしまう事もある。
YUKIがしなければならない事があるのならそれを優先して欲しい、楽になれるなら、幸せならそれでいい。そう思っています。
メンバーである以上に16年連れ添った友人。これからも変わらずに友人として笑いながら人生を歩んで行けたら嬉しいです。

HIZAKIコメント

初めて会った日から、その優しい人柄に幾度となく自分も救われました。ドラムプレイやフレーズセンスの良さは素晴らしいし、生粋の音楽好きなところはめちゃくちゃ尊敬しています。
ジストニアのことは正直悔しい気持ちはありますが、あんなにも苦しんでいたのにここまで諦めずに頑張ってくれてYUKIくんに感謝です。奇跡とも言える時間を共に過ごしてくれてありがとう。
これからは別の人生を歩むことになりますが、YUKIとVersaillesを暖かく見守っていてください。

TERUコメント

来年以降、様々な活動形態を模索しながらVersaillesは何年でもYUKIくんを待ち続けようとしていましたがそんな中、引退の申し出がありました。
もちろんメンバーとしてはいつまでも一緒に活動したかったけど、人には各々の人生がありその道を尊重すべきだと思い受け入れる事にしました。これは長く長く一緒にやってきたからこそです。
YUKIくんにはドラマーとしてだけではなく、活動の中で色々とフォローしてもらい、ちょっとした一言で救われた場面も幾度もあったので感謝しています。誇れるメンバーです。このメンバーだからここまで来れたし今まで一緒に活動できて本当に良かったです。
YUKIくんとは今生の別れではないけどやっぱりとても寂しいです。このメンバーで活動出来る時間はあと僅かですが全力で挑みたいと思います。

MASASHIコメント

YUKIくんとはVersaillesのサポートで参加する時にスタジオで初めて会いました。
その時は会話もあまりなくて、お互いお酒が好きってことで後日二人で飲みに行った時に抜群に仲良くなれて、音楽の趣味も合うし、プライベートでも飲んだり遊んだりする仲になれて嬉しかった事を今でも覚えてます。
加入当初は個人的に色々と不安要素もあり、リズム隊の二人で練習がしたいという自分のわがままにもYUKIくんは快く付き合ってくれたし、優しく声掛けてくれました。
ジストニアで苦しんでたのも近くで見てきたし、何より家族を大事にするYUKIくんのことだから、今回引退の申し出を聞いた時は背中を押しました。
自分のバンド人生でリズム隊の一番の相方だったので寂しいですが、YUKIくんのこれからの人生を応援しています。
持ちつ持たれつでここまで一緒にやってくれてありがとう。
最後まで一緒に駆け抜けましょう。
そして、これからのYUKIくんとVersaillesをよろしくお願いします。