村上龍、鈴木成一 「櫻の木の下には瓦礫が埋まっている。」サイン会@代官山蔦屋書店

木曜日の話。

村上龍鈴木成一のサイン会に行ってきました。


『櫻の木の下には瓦礫が埋まっている。』(KKベストセラーズ)刊行記念 村上龍さん&鈴木成一さんサイン会


村上龍のメルマガを読んでいて、新作のエッセイを出すにあたって彼の刊行記念サイン会が行われることを知った。しかも今回、新作の装丁を担当している鈴木成一も一緒だと。

村上龍は、私がちょうど一年前くらいからハマってて、著作を読みまくっている、あの村上龍である。でもって鈴木成一は、我が家の蔵書の中で最も多くの本の装丁を手がけている、あの有名装丁家である。

その二人を同時に拝めるんだって。1365円のエッセイ買えば。


メルマガ読んで、「おお、行く!」となってすぐにその日のスケジュールを確認したものの、冷静になって考えれば、私は村上龍の文章と鈴木成一の装丁が好きなだけであるから、二人の顔にはさほど興味はなく、ましてやサインには全く興味がない。しかも、今回のサイン会対象作はKKベストセラーズの新作エッセイである。村上龍が数年に一度出す気合いの入った長編小説ならまだしも、大抵あんまり内容がなくて印象に残らなくて、いつも読むたびに「まあ、こういうの書いて稼いで、それでたまーにいい長編書いてくれれば、それでいいよね…」と思ってしまう、エッセイである。

そう思い直して、整理券の予約もせずにサイン会の週を迎えた。


が、前日夜になってもまだうじうじしていた私が、出版記念のサイン会など、村上龍を1m以内の至近距離で見られる機会というのはどの程度あるのかをネットで調べてみたところ、どうも一年半から二年に一度であるということが判明。

その日はちょうどAKB選抜総選挙の開票日で、今や、国民的アイドルAKB48のトップメンバーですら、CDを買えば年に数回は間近で会えるのに、私の中で今最もアツい存在である村上龍には数年に一度しかお目にかかるチャンスがない…!冷めやすい私が一年もハマっている村上龍を、こんなに高いテンションで見られる機会はこの先もう二度とないだろう、と気づいた私は、そのわけわからん勢いで蔦屋書店に電話をかけ、結局本と整理券を取り置きしてもらった。


そして当日。

嬉々として会社を定時で上がり、代官山に向かってみたら、ガラス張りの部屋の中にもう村上龍鈴木成一がスタンバイしており、関係者と、サイン会に並ぶ人達と、たまたま居合わせた買い物客がその周りを囲んでいた。

私は初めて生で村上龍を一目見ただけで目的の9割方を達成してしまい、もう満足してしまったのだが、せっかく本を予約したので列に並びサインをしてもらうことに。

作家のサイン会などには今まで一度も行ったことがなく、行った試しがあるのはヴィジュアル系バンドマンのイベントだけ…という私は、下の点だけを心に決めて、浮かれている人など一人もいない列に並んだ。

村上龍のことをついうっかり呼び捨てないよう気をつける
 (家でいつも「龍」とか「ドラゴン」とか言ってるので)
・少なくとも村上龍には握手を求める
・ちゃんと目線が合うまで喋る
・頭真っ白になるとつい言ってしまいがちな「頑張って下さい」は絶対言わない


いざ自分の番になって、超至近距離で初めて見た村上龍は、最近の著者近影としてネットで見る画像よりかなり若く見えた。そりゃもう60歳で顔のしわは濃くなってるけど、なんというか、色黒のソース顔でドヤ顔であるからだけではない、圧倒的な存在感があった。

まあ、そう見えたのは今の私が村上龍の信者に近いような状態だからなんだろうけど。

そんな彼に対し、私は言いたいことを言った後に図々しくも握手を求め、サイン会を勝手に握手会にしてしまったが、意外に快く応じてくれた。

鈴木成一も、今まで各種メディアでしか見たことがなかったけど、想像していたよりもしゃきっとしていた。もっと飄々としたかんじかと思っていたんだけどね。

二人ともに言いたいことを言えたし、勝手に予想していたより対応もよかったので大満足である。全ては自己満足。よいイベントだった。行ってよかった。


そういえば、このサイン会では剥がしがなかった。ていうか、並んでる人の多くは一言二言話しかけて、あっさり次へと進んでいき、あまりの興奮により一人で喋り続けてしまう人など誰もいなかった。

私も最近はVersaillesのイベントですら滅多に行かないけれど、そういう場に行くと必ず、(バンドや音楽というより)メンバー自体のことが好きで好きで、心から好きで、死ぬほど好きで、っていうのが他人である私にまで伝わってくるような熱烈な大ファンが数人はいて、今にも泣きそうな顔をしながらメンバーの手を両手で握りしめ、長々と愛を語り続けていたりする。

私個人は、バンドマンにはあくまでステージ上の、フロアから手を伸ばしてもぎりぎり届かない位置にいて欲しい方なので、私にとってのその最適距離よりはるかに間近で彼らに接せてしまうイベントものはあまり好きではない。なので、たまにイベントに参加したところで、メンバーに長時間熱い想いを語り続け、スタッフに引き剥がされるまで、順番を待っている他のファンの白い目線に全く気が付かないような熱いタイプの人間ではないと思うのだけれど、そういう人のことはある意味羨ましいし、そういう人を傍から見るのは結構好きだったりする。真っ直ぐで、微笑ましい。

しかし今日は、その手のファンには遭遇しなかった。まあそりゃそうか…本人の顔も含めて大事な要素である、アイドルやアーティストじゃないんだもんね。皆、文章か装丁かが好きでファンなんだもんね。いや、そもそも、ファンとも言わないのか。読者?愛好家?

あ、でも手土産や手紙を持参してきてる人はいたな。私の好きな売れないバンドの上手ギタリスト、っていうかHIZAKIは、一時期愛用の香水やら入浴剤やらの日用品が切れるとブログを通してファンにおねだりをしていたが(……)、50歳と60歳の、十分に著名で十分に収入があるであろう主役二人に対し、ファンは一体どんなものをプレゼントしているのだろう。ちょっと気になる。



サイン会終了後、私はあまりの興奮にテンションが上がりすぎて居ても立ってもいられなくなり、Signで夕飯を食べ、お酒を飲み、それでもまだ飽き足らずに自宅の最寄り駅に戻ってからまた飲み屋に行って二次会を行った。

生まれて初めての経験ができて、よい日だった。やはり、イベント事は自らどんどん設定していかないとね。

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