今年読んだ本 前編

2011年読んだ本、記録残ってるのが25冊。


大好きな吉田修一の著作を、現在出版されている分は全て読み終わってしまったので
なんか読む本ないのーと、夏前に適当に手に取った村上龍にドハマりしてしまい
その後は村上龍ばーっか読み続けた、そんな一年でした。
秋以降は、中国語をやり始めて
通勤中も土日でも、小説じゃなくて中国語のテキストだけを読むようになったので
読書はほとんどしなくなってしまい、ペースガタ落ち。


以下、まとめを兼ねて、私の勝手な評価が低かった順に列挙します!




<★☆☆☆☆>
読むのに費やした時間が勿体なかったです、というシリーズ 

ランプコントロール
おい!善生!いい加減に目を覚ませ!
と言いたくなるほどの駄作。善生の悪い部分が全て出ている…!
相変わらず言葉と文章自体は美しいけど、内容メルヘンすぎ。
いや、メルヘンっていうかメンヘラすぎ。なにこれただのネタ本?
これ読んで、もう善生の恋愛小説ものは今後一切読みたくなくなった。
彼の文章そのものは好きなので、ノンフィクション書いて欲しいんだけどなー
もう、以前の熱帯魚シリーズでもいいから、早くそういうの書いてくれ。


ヘヴン
文章が稚拙すぎて読むに堪えない。
この稚拙さ、たぶんわざとなんだろうけど、そういうのいらないです…
それでも、帯で徹底的に煽ってるので
最後の最後でなにか感動が巻き起こるのかと思ったら、構成までもが稚拙だった。
内容があまりにも浅すぎるぞ!勘弁してくれー。
読んでも読んでも同じ表現の繰り返しばっか。「涙がとめどなく溢れ」てばっか。
これも、読んで「もうこの先、川上未映子読むのやめよう」と思った。
この人は、今はまだ短編の方がいいのでは。


  • 山崎将志「残念な人の思考法」

残念な人の思考法 日経プレミアシリーズ
読んで私が残念な気分になった。
これ系の啓発本?みたいなのは他にも何冊か読んだけど、
「(仕事が出来る優秀な)あなたの周りにも、こういう残念な人はいませんか」
で始まり、周りを馬鹿にして読者の優越感を刺激しつつも
いつの間に読者自身が「残念な人」にすり変わって説教&激励されてるという、
この種の構造の本だめだわ。イライラばかりがつのり、何の気づきもなかった。




<★★☆☆☆>
時間の無駄とまでは言わないが、全くもって好きではなかったシリーズ

平成猿蟹合戦図
私の大好きな修一の新刊、ということで大変期待して読んだのですが
なんじゃこれは!読んでびっくり!なんたる駄作!…というかんじでした。
私が好きだった修一のよさが、全て失われている!!
今まで読んだ修一の小説で一番だめだった。全く好きになれん。
なんか、ディルが「six ugly」と「鬼葬」を出した時の絶望感に近いものを感じた。
レビューで「スカッとする」「爽快」的なものが多かったので、嫌な予感はしていたのだが
読んでみたらば内容ゼロ、ただだらだら続くだけの長編だった。
しかも、修一らしからぬ、ご都合主義全開。
こういうただのドタバタ劇、テレビドラマでやる分にはいいけど
私はそんなん望んでなーい。
ていうか、いつもの修一の
「最初の一行から最後の一行まで貫き通されてる緻密な初期設定」は一体どこへ?
まさか、何書きたいのかわかんないまま書き始めたんじゃ…と
思ってしまうほど適当。脈絡がない。
単純にエンターテイメントものとして読む分にはいいのかなー
いやー、修一に、今後この路線貫かれたら困るなあ…どうしようーーー
ううう。悲しい


ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界〈2〉
五分後の世界」の続編ということで、
前作に大・大・大感動した私は大期待しながら読んだわけですが
びっくりするほど失敗作だった。うっそーん。
前作に満ち溢れていた緊張感や緻密さが、決定的に欠けている。
最早、この本の存在自体が蛇足。
五分後の世界」のラストで見せたあの潔さでもって、続編など出すべきではなかった。
インディーズラストの「Métamorphose」で期待度を上げておいて
ここぞというデビュー作が「fiançailles」だった1999年のLAREINEとか、
メジャーデビュー作の「ASCENDEAD MASTER」で散々上げておいて
2ndシングルの「DESTINY」でまさかの美川憲一コスプレで
謡曲を歌い始めてしまった10年後のVersaillesとか、
あのへんの「ズコー」感に近いものがあるよ。
(それ言いたいだけ)


共生虫
ことごとく、必然性に欠ける本。
とにかく作りが雑。
主題というか、この本を通して彼が言いたいことはわかるんだけど
それを書くための設定とストーリーを大規模に失敗しました、っていうかんじ。
でもこれも、発売時に読んだらもうちょっと面白かったのかもなー。
マスタードガスとかVXガスとか、そのへんの記述は懐かしかったけど
今読んでももうリアル感はないもんね。


とおくはなれてそばにいて―村上龍恋愛短編選集
またもや龍。
「恋愛短編集」というので、
通勤中に電車でさらーっと読むのにぴったりかな、と思って持ちだしてみたらば
しょっぱなからセックス描写ばっかで、えーこれちょっと外で読めない…となって
家でうだうだ読みました。
龍にとっての恋愛小説って、セックスとSM描写ばっかなのね…
まあそれはそうと、あんまり内容がなかったので星2つ。
タイトルと前書きと料理描写は好きなんだけどねー。中身がねえ…
この人が書く料理はいつもなんだか美味しそうでよい。ビルマナマズ食べたい。
ひきこもりの私でも、一人旅に出て飲みに行きたくなる。料理短編集買いたいな。


  • 村上龍「どこにでもある場所とどこにもいないわたし」

どこにでもある場所とどこにもいない私
これも短編集だけど、
これといって特筆すべき点がないくらい平凡な本だった。
私は村上龍の、その時代時代の社会背景を元にした長編が好きみたい。
と、ここでやっと気がつく。
あと村上龍は一人称になると人物の書き分けができないね。
「共生虫」でもここが致命的だと思ったけど、全員同じ知能レベルになっちゃうの。
誰書いてても村上龍自身が出てきちゃうので、
自分の投影である主人公に語らせる以外では一人称やめた方がいいな。


乳と卵
ひたすらに「あーこれ芥川賞っぽい!」というかんじ。
そして「あーこういうの20-30代の一部の女性に馬鹿ウケしそう!」というかんじ。
賞を狙いにいく作品としてはとってもうまいし、
内容も、だらだら続いていそうでだらだらしてない口語文体も、
作戦としては大成功だと思うけど、私自身はあんまり好きじゃありませんでした。
でもまだ読めるので、「ヘヴン」よりはよっぽどマシです。


佐藤可士和のクリエイティブシンキング
自分の手がけた仕事と、それについてのエピソードを語ることで
俺様の考えるクリエイティブシンキングについても語っちゃうよ、という本なんだけど
なんせ、近年のこの人の仕事はどれもこれも有名すぎて
この本読んで初めて知るような内容がほとんどなかったので、
新しく得るものがなく、残念ながら楽しめなかった。悪い本じゃないけど。
佐藤可士和って誰?くらい彼のこと知らない人が読んだ方が面白いと思う。




<★★★☆☆>
割と好き。しかし読後にあっさりとした感情しか沸き起こらなかったシリーズ

白鳥
今までに読んだ、村上龍のなんてことない系短編集の中では一番好きかも。
村上龍の著作は発表順に読んでなくて、
短編は色んな本で別々に読んだりしていたので
これ読んで初めて「おお赤川美枝子は三部作だったんか…!」と知った。
あのシリーズ割と好き。なんてことないんだけどね。赤川美枝子への愛を感じる。


限りなく透明に近いブルー
たぶん中学生のときに一度読んだことがあって、
でもそのときは何も思わなかったし覚えてなかったんだけど
今読んだら「うっわーこれはすごい」っていう。圧巻。
前半つまんなくて、読み切れる気がしなかったけど
後半ぐいぐい引きこまれてしまった。この人、しょっぱなから、綺麗な文章書くなあ。
村上龍に関しては、文章自体でイライラさせられることがほぼ皆無なので
内容が自分に合わない作品でも、ノーストレスで読めて嬉しい。合う。
なんかこの人、野音好きだよね。色んな作品で出てくる気がする


夢で会いましょう (講談社文庫)
二人の作者による、
どうしようもなくくだらないけど、たまにクスっとさせられるショートショート
村上春樹の長編はクセがありすぎ&古すぎて苦手なんだけど、
文章はやっぱ上手いし面白いので、彼のこういう短い文章読むのは楽しいなー。
村上春樹のオタクっぽい文章も、糸井重里の内容ない文章もよい。
ちょっとした移動中に読む用とか、トイレなんかに置いとく用にするのがいいのでは。


オートフィクション
あー私やっぱ金原ひとみの文章好きだわ。
崩れてるけど勢いだけがあって、
内容どうこうをほっぽってひたすら猛進するかんじ。読んでて楽しい。
あと彼女に関しては顔が好きです。青白い薄地味顔に厚化粧、これ最高。
いつも内容は別に好きじゃないんだけど、これは10代の頃のことを思い出すねー
あの頃一緒に遊んでたディル友達は元気にしてるのかしら。とか色々思う。
金原ひとみは今後もたまに読んでいきたいな。


ベッドタイムアイズ
詠美さまのデビュー作。
村上龍同じく、しょっぱなからこれかーと驚かされるばかり。
この人がいたから、後の金原ひとみ芥川賞があるんだなあってよくわかる。
山田詠美は好きな作品と、まーったくのめり込めない作品と二種類あるんだけど
これはよかった。「風味絶佳」は、つまんなすぎて読むの途中で放棄中…
GINGERでやってるこの人の連載は、ポジショントークが安心・安全で、結構好きです。


白夜行
ちょう有名作だが、今までドラマも映画も見てなかったので初体験。
すんごいエンターテイメント性高くて、面白かった!
ミステリーって書いてあるけど、実質サスペンスだよねこれ。
謎解き要素はゼロだし、安直っちゃー安直なんだけど
丁寧に書かれてるし、なんせ全編に渡って数作品分と思える量の
エピソードがてんこ盛りなので、長々楽しめる。
いやー、これは映像化したくなるよね。ドラマにぴったりだわ。
雪穂役、綾瀬はるかは「…?」って思うけど、堀北真希は結構合ってるのでは。
顔の端正さと演技力は別にして、
前田敦子の、あのにじみ出る暗さでもよかったかもしれんね。
文体は、残念ながらいちいちおっさんくさくて好きじゃなかったです。
特に雪穂の美しさの描写がむちゃくちゃおっさんくさい!
ので、今のところ他の著作を読む気にはなれず。


最後の息子
これは再読。一度売ったのを買い戻した。
表題作もいいけど、やっぱ「破片」ですよ。これが断トツ好き。
…なんだけど、震災後にこれ読むと、津波のニュース映像を思い出して
恐ろしくなってしまうので、もう、しばらく読み返せる気がしない。
「破片」に出てくる、長崎に住む幼い兄弟っていう設定は
その後の作品でも繰り返し繰り返し書かれるよねえ。修一の基盤なんだろうね。
そのまとめが「長崎乱楽坂」だと私は勝手に思ってて、
あの作品大好きだったので、また読み返したくなった。
それから、爽やかでないシケた学生時代しか過ごしていない私は、
よく言われる「Water」の爽やかさというのが未だに理解できません。




うーーーーん、長い!書いても書いても終わらん!
後編に続きます。